こんにちはTFN代表の石毛です。
TFNサイトを引っ越したので過去の記事を再掲します!
【僕の人生は一回27歳で終わってる】
僕は一度死んでいる。
いや、正確に言うと死にかけた。
僕は大学を卒業してからプロの格闘家になった。自慢じゃないが結構強かったと思っている。主戦場は総合格闘技の老舗「パンクラス」
格闘技好きだったらすぐ、こういうだろう。船木さんの作った団体でしょ!鈴木みのるが!掌底が!などと。
まあ格闘技好きじゃないとわからないだろう。
総合格闘技とはいわゆる昔、大人気だったイベント「プライド」のようなルールだ。
その時代の男はみんなプライドで活躍していた「桜庭選手」に憧れたんだ。
プライドと言って想像できなければこういった感じだ。
パンチ、キック、投げ、絞め、関節技ありのほぼなんでもありのルールで勝利を争う競技が総合格闘技。
僕は2003年にパンクラスでプロデビューをして2006年にはパンクラスの王者になった。
王者になるまで三年くらいか。以外に早かった気がする。
なんで総合格闘技をはじめたかというと。僕は中、高、大、柔道で日本一になるために情熱を燃やしていた。でも結局柔道では結果出なかった。
柔道で結果がでなかったので新たに目標が欲しかった。
いま、格闘技をはじめた理由を考えてみるとそんなところだろう。
最初の話に戻ろう
僕は27歳で一度死んだと思っている。
2007年5月27日ディファ有明でイギリス人と金網の中で試合をした。
赤い髪のモヒカンのイギリス人とだ。
リングではなく八角形の金網に囲まれた場所で試合が始まった。僕は相手と間合いをとり左ジャブを放った。
僕の左の拳が相手に当たった。彼がニヤリとしたのを覚えている。
また僕は赤い髪のモヒカン男に左ジャブを放った。
その刹那、彼は僕の左に、左ジャブを合わせてきた。
僕は倒れたらしい。僕の記憶はここから途切れ、途切れだ。
次の記憶は僕が相手を投げて、相手の首を絞めていた。でも極まらなかった。
あとはもう覚えていない。
僕は最終3ラウンドまで動いていたらしい。僕の本能は負けを拒否した。
映像を振り返って見て見ると僕は意識がないのに疲れ切った動きで相手に殴りかかっていた。
相手も疲れていたのが映像越しにわかる。
僕は負けた。
その後の記憶は少しある。花道をもどり僕は倒れた。段々呂律が回らなくなってきた。
救急車が来て。担架で運ばれた。
担架に乗せられたのがとてつもなく恥ずかしかったのを覚えている。
目覚めたらベッドの上。何かがおかしいと感じた。なんだろう。
右手が勝手に動いている。右手が僕の意思通りに動かない。
僕は右手を自分のもとに近づけようとしたが動かない。
僕はプロ格闘家だ。
自分の意思通りに動かない右手と戦った。しかしどんなに右手をコントロールしようとしても右手は自由にならない。しかたがないので左手で自分の右手を自分の体に近づけてきた。左手を離すと右手は勝手に動く。
自分の右手と格闘しているときに看護師さんが部屋に入ってきた。
「あっ!石毛さん目覚めたんですね!」と部屋に入ってきた看護師さんは僕に話してかけてきた。
また異変を僕は感じた。
しゃべれない!相手の言葉は理解できるが僕は言葉を発せない。
あーとか、うーとしか言えない。
筆談をしようと僕は閃いた。紙とペンを持ってきて!と言葉にならない言葉を発し必死にジェスチャーを看護師さんに向かって繰り返した。彼女は気づいたのかペンと紙を僕にもってきてくれた。
僕はペンを握り、紙に文字を書いた。僕の手の中にあるメモ帳には見たこともない文字が書かれていた。文字すら書けなくなっていた。僕がなにをメモ帳に書こうとしたかはもう思い出せない。
上半身の右側の自由が利かない。顔の右側も動かせないことに気づいた。
でも上半身の右側が麻痺になっているのに僕はなにも怖くはなかった。僕の頭の中は負けた悔しさしかなかった。
そうこうしてるうちに僕は病院のベッドで寝ていた。
次の日、少し症状は和らいでいた。僕を担当してくれた医師は、症状は徐々に治っていくでしょう、と言った。どうやら僕の左の脳から出血をしていたらしい。だから体の右側に麻痺がでたということだった。
僕は病院を一日で退院した。
一週間たった。右側の麻痺は和らいでいた。僕はなぜ負けたのか分析をして、次の勝利に向けて練習の計画を練った。この負けで僕の弱点が見えた。次はもっと強い石毛大蔵をリング上で表現できるだろうと心が躍った。
しかし想像以上に僕が負ったダメージは深かった。
僕の総合格闘技での試合はこの試合が最後になってしまった。
たまたま僕はこの試合のあと意識が戻った。
死ぬってあっけない。
この経験をするまで命が有限であるということに僕は気が付かなかった。
命は有限である。
こんな経験をしているのにも関わらず有限である時間をついつい無駄なことに費やしてしまっている自分を戒めるためにここに過去の経験を記す。
《終わり》
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